Born on a Baseball Planet
スイスのチームへの合流とヨーロッパクラブとの契約プロセス、外国人選手の超えるべき壁 Getting Contracts with European Clubs

前回のブログから間が空いてしまいまして申し訳ありません。前回までのブログでは、2019年夏のシーズンはスイスとメキシコでプレーする予定であること(アメリカ独立リーグを辞退した理由。今季はメキシコサマーリーグとスイスリーグでプレーします The Reason Not Playing For Indyball)、航空券予約の際に名字と名前を逆に入力してしまい大わらわ(【実体験】名字と名前、逆に予約の航空券で飛行機に乗れるか乗れないか?日本発、アメリカ経由、スイス行き、ほぼ世界一周して野球しに行く理由)というところまでお伝えしました。

 

今回はその後、紆余曲折を経てスイスに上陸してからのこと。外国人選手が海外リーグで直面する、いくつかの問題について書き留めておきたいと思います。

 

 

海外クラブと契約するときのプロセスについては以前のブログでも少しお話ししたことがありますが(海外野球チームと自分で契約交渉する方法と、ヨーロッパに到着したぼくにチームメイトが言った言葉)、

 

 

 

1. チームからプレーして欲しいという意思決定をもらう(この時点で条件も決定している場合が多い)

 

2. ただしその時点ではその条件のための資産が用意できていない場合も多く、それをチームが揃える必要がある

 

3. これが揃った時点で正式契約、出国準備に入ってくれという連絡が入る

 

 

 

というのがざっくりしたプロセスです。この資産というのは例えば滞在する家のことで、これを見つけるというのが国によってまたは国の中でチームが拠点とする地域によって難易度が大きく変わって来ます。

 

例えばオーストラリアの首都キャンベラのステイトリーグでプレーしたときは、プレーして欲しいという意思は表明してくれたものの滞在する家が見つからず、そのままシーズン開幕。これ以上待っても仕方ないと判断したぼくは「とりあえず行って自分で家を探すから、プレーする中でチームに必要だと感じたらきちんと家を用意してくれ」と言って渡濠。見事、三週間後にホームステイ先を用意してもらうことができました。

 

のちに、実際にオーストラリアに来てくれて、お前がどんな人間か、チームにとって必要なプレーをしてくれる選手かということがわかってホストファミリーも手を挙げてくれたんだと言ってくれたので、この行動は大成功でした。

 

 

 

さて、今回の例で言えば、スイスのチームは以前2016年にもプレーしてよく知っているチームでしたから、ぼくが連絡してから3日で「Tが来てくれるんなら」と言って即快諾してくれました。すでに予約してあった飛行機ですぐに出国したのですが、ワシントンD.C.でトランジットの間に、実はまだ滞在する家が見つかっていないということを告げられました。さらに「プレジデントの俺が連絡しても返信が悪いから、Tが自分でチームチャットに聞いてみてくれない?」とのこと。海外で仲良しのチームなんてこんなもんです。

 

さっそく2016年から入りっぱなしになっているチームチャットにその旨尋ねてみると、仲良しのレネから「好きなだけ泊まって行ってくれ!」との返信が。拍子抜けするくらい簡単に決まったと思いきや「ただちょうどいまバカンスでスペインに来てるから一週間後からにしてくれ!」とのこと。ワシントンD.C.からさらに飛んだコペンハーゲンでコーチも兼任するアメリカ人選手のテイラーから電話があり、結局その一週間はテイラーの家でお世話になることになりました。

 

テイラーがフィアンセと住む家は、シザッハ・フロッグス Sissach Frogsのグランドから徒歩約10分。結婚式を3週間後に控えていた2人はその準備に大忙しでしたが、一緒にチーズフォンデュをやって歓迎してくれたり、テイラーの仕事が休みの日にはスイスの首都ベルンを流れるアーレ川に愛犬のTacoくん(カリフォルニア出身なので)を連れて泳ぎに行ったりと楽しい日々を過ごしました。

 

 

そんな中、新たな問題が発生。それはライセンスに関わることでした。あまり問題になることはないので意識する機会は少ないのですが、上記契約に関わるプロセスの4番目として、

 

 

 

4. ライセンスの取得

 

 

 

というものがあります。これは大抵は契約が決まって海外に渡った直後、パスポートのコピーや写真を求められて渡すと勝手にやっておいてくれるものですが、本来ライセンスの取得というのはお金の掛かる工程です。

 

今回スイスでの金額は4万円くらいだそうで、オーストラリアでも同程度の金額でした。ただしこの2ヶ国は物価の高い国なので、他のヨーロッパ諸国ではもっと安く済む可能性もあります。事前に契約を結んで渡航した場合には、大抵は何も言わなくても条件の中に含まれていてこちらが払うことはないお金なのですが、オーストラリアなどに留学などで滞在しておりプレーしたいとお願いした場合や、全額自己負担するのでとにかくプレーする機会が欲しいと言ってお願いしてプレーさせてもらう場合には選手が負担することになります。

 

反対に言えば、金銭的に何も受け取らなかったとしてもこのライセンス登録料を免除されたのであればその分の金額は自分の稼いだものと自信を持って良いのではないかと思います。

 

 

 

さて、今回ぼくが滞在するのは1ヶ月半。試合数の少ないスイスではバケーションウィークとも重なり、その間の試合はたったの2日間4試合ということがわかりました。今年経済状況が芳しくないというフロッグスとしてはその4試合のためにライセンス料を払うのかということが若干の議論にもなったようですが、この4試合はプレーオフ進出のために重要な試合だということになり了承してくれました。プレジデントのミシャエルが、ライセンス取得のためフェデレーションへと向かってくれました。

 

しかし、大きな問題が発生したのはここでした。ヨーロッパの中でも繊細な国であるスイスの野球協会には、会員たちも知らないような細かなルールがたくさんあります。

 

実は昨年2018年にも、アメリカ独立リーグのエンパイアリーグでプレーした直後の8月半ばからプレーオフまでこのフロッグスのためにスイスでプレーできないかという計画がありました。しかし、これはプレーオフのためだけに大幅な補強ができないように「選手は7月最終週までにライセンス登録を終え5試合以上プレーしていなければならない」というルールに阻まれて実現しませんでした。

 

このルールは理解できます。プレーオフ直前になってマイナーリーガーや所属を持たない元ナショナルチームプレイヤーなどを招集すれば、レギュラーシーズンとのパワーバランスは大きく変わってきます。チームは数週間のためだけの補強選手に報酬を払えばよく、それまでシーズンをプレーしてプレーオフ進出を決めた選手たちは出場機会を失います。実際にドイツやベルギーのリーグにもこのルールはあり、それがMLBやNPBで言う移籍期限のような役割を果たしていました。

 

 

 

しかし、今回協会から提示されたのはこんなルールでした。「外国人選手はライセンスを取得する以上、最低2ヶ月間以上スイスに滞在しリーグでプレーしなければならない」ぼくはこのルールに対して何か発言する立場にはありませんが、このルールの存在を知っていたのはごく少数。むしろフロッグスに関して言えば協会の運営にも関わっているプレジデントを含めて、誰も知らないという状況でした。

 

何人かのスイス人選手たちは、2ヶ月間滞在すると言ってライセンスを取って何も言わずに出国してしまえばいいじゃないか。それだったら怪我して帰国する選手の扱いはどうなるんだよ。そもそも何のためのルールだかわからない。などと言ってくれましたが、2016年にもプレーして敵味方を含めて多数の友達がいるぼくに、といってもお前はここスイスではこっそりやるには有名すぎるな。といって諦めモードでした。

 

ぼくとしても2016年以来にこの大好きなクラブで仲間たちとプレーできるのは夢でしたが、ルールを破ってチームに迷惑をかける可能性があるのは気持ちよくありません。いくつかの選択肢がありましたが、残り1ヶ月間ここスイスで練習をしながらチームのコーチングや手伝いをして過ごすことにしました。

 

ひとつ危惧があるとすれば、それは滞在する家のことでした。ぼくはこのチームでプレーすると言ってその契約のなかに滞在先の確保という条件が含まれていたと捉えていたので、滞在先を提供してくれるテイラーとレネにその旨伝え、I feel badだよと話してみました。すると2人ともfeeling badする必要はどこにもない。ぼくらはお前が友達だと思って家にいて欲しいと思っていて、それだけじゃなく練習の手伝いやコーチングもしてくれる。すごく嬉しいよと言ってくれました。

 

何人かは有志を募ってコーチング代まで払ってくれると言ってくれましたが、それは丁重にお断りしました。ぼくにとっても彼らと一緒に練習したりコーチしたりすることは喜びなのです。

 

 

そういうわけで残念ながら3年振りにスイスリーグでプレーするという希望は叶いませんでしたが、3年来の友達に囲まれて、大好きな国で、テイラーの結婚式や新しく生まれたチームメイトの赤ちゃんにも会えたりして、スイスではとても幸せな滞在期間を過ごすことができました。

 

ここでオフの間に仕事で鈍った体を温めて、次の旅路はメキシコへと向かいます。こちらもさらに紆余曲折ですが、今年はきっとそんな年なのかもしれません。こんないろんな事件や一筋縄ではいかない諸々も、海外ならではと思って楽しんで旅を続けたいと思います。

 

 

 

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