Born on a Baseball Planet
メキシコ独立リーグをクビになって強豪チームと再契約した方法 Moving to Diablos de Ia Bojórquez

先週の水曜日、目を覚ますと見覚えのない番号から1件のメールが届いていました。後でわかったことによると、それは2週間前に新しく変わった監督でした。

 

メールにはこう書かれていました。

 

“君に重要な連絡がある。君との契約を終了して、別の選手を獲得することになった。2週間後には最終ロースターが決定され、それ以降メンバーの入れ替えはできなくなる。トランスレーターを使った拙い英語で申し訳ないが、それでは”

 

訳が分からずに、メキシコに来る前から連絡を取り合ってくれていた英語の話せるプレジデントの娘に聞いてみると、わたしもいま初めて聞いたとのこと。とにかくお父さんに聞いてみると言ってくれました。

 

 

 

プレジデント娘からの返信はなかなかありませんでしたが、今はキッズチームのコーチをしている前の監督に連絡をすると、

 

“No more Senadores”

 

の返信が。夜になるとフェイスブックが繋がっているプレスの記者からもメッセージが来て「いったい何があったんだ。とても残念だよ」と言われ、いよいよリリースは決定的となりました。

 

 

 

事の発端は3日前に遡ります。その日3打数無安打1四球と活躍していなかったぼくは、同点の9回にチャンスで代打を送られました。しかしその代打は普段はピッチャーの選手。監督は野手兼任だと言いましたが、それがシーズン初打席でした。

 

結果はカーブに三振。裏にサヨナラ負けとなりました。

 

納得のいかないことがあれば対等に意見し合えるのが海外野球だと思っていたので、ぼくは試合後に英語とスペイン語のできる選手を通訳として連れて監督のところに話し合いに行きました。

 

しかし、それも双方意見は食い違ったままお互い何も納得できずに終わることになりました。ぼくはこの日無安打とはいえ先週、先々週と2週連続でホームランを放っており、打率も.250と悪くはない数字を残していたので、あの場面でピッチャーを代打に出されるというのはどうしても納得がいかなかったのです。しかし、監督としては結果は伴わなかったがそれは監督としての自分の判断であり、今後もその考えを変える気はないとのことでした。

 

正直にいえば、監督交代以降はじめの1回しか平日の練習には顔を出さずに、週末の試合だけ来て采配を振るう監督に対する不信感もあったのだと思います。

 

それから3日後の解雇通告でした。

 

 

 

解雇されたことを隣室のドミニカ人で元シアトル・マリナーズでもプレーした”カミナンテ”に話すと、心から憤ってくれました。そもそもそのやり方は選手に対するリスペクトに欠けるし、俺はもっとお前と一緒に野球がしたい。そう言ってすぐに知り合いのいるチームに連絡を取ってくれたのです。

 

いつも身の回りのお世話をしてくれているヘルマンおじいちゃんも、どこにも行くところがなくなったら家に来いと言ってくれるなど、なんとかぼくが住む場所を確保できるように取り計らってくれました。

 

地元の新聞でもぼくのリリースを新たに契約した選手より大きく扱ってくれたり、ラジオでもかわいそうなリリースだと報じてくれたり、リーグに関係するたくさんのひとがメッセージをくれたり励ましてくれたりしました。彼らの言葉があったから、自分の力やここでやって来たプレーを信じてポジティブでいることができました。

 

最終ロースター決定まで1週間半。チーム探しが始まりました。

 

 

まずはじめにコンタクトを取ったのは、同じリーガ・メリダーナのルーキーズ・デ・ラ・マリスタ Rookies de la Maristaでした。このチームの監督は選手兼任のピッチャーで、ぼくは彼から直接ツーベースを打っていたので覚えていて興味を持ってくれたのでした。

 

しかしゼネラル・マネージャーとのミーティングまで行ったものの、大学生を中心として若手育成に重点を置いているルーキーズというチームの性質上、新しく外国人選手を獲得することは難しいと言われてしまいました。

 

 

 

ルーキーズとほぼ同時に連絡がついたのが、こちらもリーガ・メリダーナのディアブロス・デ・ラ・ボホルケス Diablos de Ia Bojórquezでした。このチームはたまたまルーキーズのゼネラル・マネージャーとのミーティングの前に、別の選手を送って行ったグランドで試合をしていたので話しかけた(ヘルマンおじいちゃんが)ところ、突然明日うちのチームでプレーするか?と言ってくれたのでした。

 

その週のロースターは水曜日までに決定しなければならないのにどうやってプレーできるのかわかりませんでしたが、フリーエージェントの立場でプレーするか?と聞かれて断る選択肢はありません。もちろん快諾して、翌日PM1時にグランドへと向かいました。

 

 

 

行ってみると、それはリーガ・メリダーナの試合ではありませんでした。球場は同じ球場、チームも同じディアブロスですが、そこでプレーしていたのは白髪混じりのおじちゃんたちで、ユニフォームもバラバラ。ダグアウトでビールまで飲み始めてしまう始末です。趣味のおじさんたちのアマチュアリーグだったのです。

 

一瞬そのまま帰ろうかという考えさえ過ぎりましたが、帰っても寝るくらいしかすることはありませんから、せっかくなので楽しんでプレーすることに。ヒットは1本で大活躍とまでは行きませんでしたが、試合には勝利して、勝利の後にはタコスにピブ(ローカル料理です)にビールまでもらって、彼らと素敵な日曜日を過ごすことができました。

 

英語が話せる選手はほとんどいませんでしたが、これまでに覚えた簡単なスペイン語やマヤ語のスラングを披露するとみんな笑い転げて喜んでくれたのでした。

 

みんなが来てくれてありがとうと言ってくれましたが、ぼくのほうこそありがとうという気持ちでした。彼らの大事な日曜日に混ぜてもらって、ぼくに試合をプレーする機会を与えてくれたのです。彼等はダグアウトで笑ってビールを飲んでいられればハッピーだと言ってくれるかもしれませんが、ぼくが出ることで試合に出られない選手がいることもまた事実なのです。

 

 

これでいったん万策が尽きてしまったので、Facebookにチームをリリースされたこと、まだここでプレーしたいことを書き込んでみることにしました。メキシコにきて以来1000人を超える友達がFacebook上でできていたので、どこからどんなところに繋がるかわかりません。

 

その投稿はメキシコ国内外から66人の友達がシェアしてくれ、何件かのメッセージによる問い合わせも受け取りました。メッセージを真っ先にくれたのは、日曜日におじさんたちとプレーしたディアブロスの1軍チームでした。

 

 

 

それから火曜日、水曜日とディアブロスの練習に参加。2日目は本格的なトライアウトとなり、内野守備にブルペン捕球、二塁送球のポップタイムまで計測すると、1球目で親指を立てて満足げな顔を見せてくれました。ダグアウトへ戻るとバッティング練習を待たずに、握手とともに、

 

“ディアブロスへようこそ!”

 

という声を掛けてもらいました。その場で「8」の背番号の入ったユニフォームを受け取り、写真撮影と、身分証明書のデータを送信。ディアブロスの帽子を被ると、チーム探しの間ぼくと一緒に奔走してくれたヘルマンおじいちゃんも、やったな!と言って大喜びしてくれました。

 

あとで聞いたところによると、彼は優れた選手でまた優れたチームメイトだと、日曜日に一緒にプレーしたおじさん選手たちが猛プッシュしてくれたそうです。日本からずっと相談に乗ってくれた、前徳島インディゴソックス監督で、ルーツ・ベースボール・アカデミー代表の養父鉄コーチも、そういうものはあとで必ず繋がってくるからきちんとやっておいてよかったなと言ってくれました。

 

 

その日のうちにロースターに登録申請。翌日の今日、ディアブロス・デ・ラ・ボホルケスと契約したことが正式に発表されました。プレスリリースの最後には、本日をもって最終ロースターが決定され、これ以降選手の入れ替えはできないという文が。戦力外通告から8日間、まさに滑り込みの選手登録でした。

 

El japonés Sorita seguirá en la Méridana: jugará con los Diablos

 

とにもかくにも、これでまだあと少しの間メキシコでプレーすることができます。さらに以前プレーしていたセナドレスは現在5位に沈んでいますが、ディアブロスは現在2位(もしくは3位)と優勝争いに絡んでいるチーム。これからの戦い方次第で、プレーオフに進める可能性も十分に残されています。

 

結果的に得た新天地での、それも本来のポジションであるキャッチャーとしてのプレー。残りのフルシーズンをプレーしたとしてもあと1ヶ月ですが、ここでできたすべての繋がりに感謝しながら最後まで充実したシーズンを過ごしたいと思います。

 

 

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