メキシコ、メリダから日本に帰国する帰路、アリゾナ州フェニックス空港にスタックしたことは前回のブログでチラッとお話しました(日本未上陸の高級志向ハンバーガー、スマッシュバーガーが美味しい SMASH BURGER)。
今回のブログでは、そのエアポートスタックの最中に空港から外出した、ある奇跡のような1日についてお伝えしたいと思います。
空港スタック中盤のある日、それを知ったフォロワーさんが、フェニックス空港からほど近いロサンゼルス・エンゼルスがスプリングキャンプを行うテンピ・ディアブロ・スタジアムを案内してくれることに。
巨大な2個のスーツケースとバックパックと一緒に空港のロータリーで拾ってもらって、スタジアムを目指します。
“もう着くよ~”
の声に顔を上げると、すでにエンゼルスの選手のフラッグが道路脇に旗めいています。その間およそ12分。本当に目と鼻の先でした。
スタジアムに着いて階段を上がると、あいにく今日はゲートが閉まっている様子。しかし、しばらく球場の外からダイヤモンドに目を凝らしたり、ゲートの中に手を伸ばして写真を撮ったりしていると、後ろを通った球場関係者らしき女性か、それとも風の仕業か、いつの間にかゲートが開いていました。
入っていいものか躊躇っていると、中から男性が出て来ました。聞いてみると、
“ぼくここで働いてるだけだから、よくわからないんだよ”
との答え。働いているひとがわからなければ誰にもわからないと思うので、どうやら入って問題なさそうです。このメイン球場の後に入ってみた練習場でグランド整備のおじさんに入って大丈夫?と聞いたときも、
“ぼくには君たちの姿は見えていないから大丈夫だよ~”
と冗談めかして言ってくれるなど、アメリカのひとたちはみんなとっても優しく接してくれました。彼らが自分たちの仕事を楽しんでやっているから、ぼくらにもここを楽しんで行ってほしいと思ってくれているのではないでしょうか。とにかく球場の中へと入ります。
美しいスタジアムでした。メジャーリーグのシーズンゲームをするような大きなグランドではなく、限りなく選手とファンの距離が近い感じの。フォロワーさんが、キャンプが始まると選手たちがどこを通ってグランドへ入ってくるのかとか、去年のスプリングトレーニングでここでシモンズとセルフィーを撮ったなどということを教えてくれて、メジャーのキャンプの様子をありありと想像することができました。
メインのスタジアムを出てもたくさんのフィールドが一箇所に集まっていて全てのフィールドはとても見切れません。車の中から一通り見て済まそうと思っていると、マイナーリーグ用のグランドでマイナーリーガーたちの練習がもうはじまっていました。観に行かない選択肢はありません。
グランドでは内野手らしき選手たちがアジリティ系のトレーニングをしており、ケージではマシン打撃が、ブルペンでは投球練習が行われていました。しばらくマシン打撃を見学したあとに、ブルペンに移動してピッチング練習を観ることにしました。
ブルペンでは背の高い左ピッチャーがひとりと、2人の右ピッチャーが投げていました。ベンチには10人近くが座って待機しています。左ピッチャーはアメリカによくいる上背を活かした投げ方をするタイプで、多少抜け球が目立つ以外はいいボールを投げていました。また彼のボールを捕球しているキャッチャーもフレーミングがよく、さすがマイナーとはいえMLB組織に属するプロ野球選手だね、などと話していました。
ところが、昨年もよくエンゼルスの試合を観戦に来ていたフォロワーさん。着いた当初から、ベンチに座っているピッチャーが絶対あり得ないけどローテーション投手のアンドリュー・ヒーニーに似ていると言っていましたが、ここへ来て左投手を受けているキャッチャーが昨年後半から捕手として出場するようになったホセ・ブリセーニョ選手かもしれないと言い始めました。
さらに投球練習を終えた左投手をよくみると、それはなんとメジャーのローテーションピッチャー、タイラー・スカッグス投手でした。となれば、彼を受けていたキャッチャーがホセだということも、ベンチで彼らの投球練習を見ているのが本当にヒーニー投手だということも俄然真実味を帯びてきます。
メジャーリーガーたちに対して、抜け球が多いだことのフレーミングがまあまあ良いだことの言っていたのが急に恥ずかしくなって大笑いしてしまいました。
果たしてブルペンから上がって来た彼らに声を掛けると、本当にメジャーリーガーのスカッグス投手、ヒーニー投手、そしてブリセーニョ捕手でした。メジャーキャンプの始まる遥か以前の1月23日に、こんなにもたくさんのメジャーリーガーがマイナーの自主トレに参加しているということにフォロワーさんも大興奮。
彼らは一緒に写真を撮ることも快く引き受けてくれ、彼らの後からグランドに来たクローザーのキーナン・ミドルトン投手も含めて、たくさんのメジャーリーガーたちと話せて、一緒に写真を撮ることができました。スカッグス投手などはとてもフレンドリーで、ぼくが恥ずかしがって隠したマイクトラウトTシャツに気づいて、写真撮るんだったらジップ開けてくれないと、などと言っておどけて見せてくれました。
ミドルトン投手は昨年トミー・ジョン手術を受けたことから、中距離のキャッチボールのみの練習でした。同じくトミー・ジョン手術を受けた大谷翔平選手も、ああいう練習から始めるんだね、などと話しながら見ていました。
帰りはアメリカお約束のパンダエクスプレスで中華を食べて、空港まで送ってもらいました。翌日には飛行機に乗って、ロサンゼルスを経由して東京、羽田へと帰ります。メキシコから数えて約3ヶ月を過ごしたアメリカ大陸を離れるのはどこか信じられないような気持ちでしたが、必ずまたこの夢のような土地に帰ってきたいと思いました。
あまりにも魅力的なアメリカのスタジアムの雰囲気に、正直に言えばもし18歳や20歳のときにこの野球に触れていたらと考えずにはいられませんでした。しかし、今日話したメジャーリーガーたちがこの環境を全身で楽しんでいるように、マイナーリーガーも、ぼくたち独立リーガーもそれぞれの環境を全力で楽しんでプレーするのが海外のスタイルです。
そう考えれば、こうしてアメリカやメキシコでプレーすることができるいまの環境も、今日ここで見たことや出会ったことも、全て幸せな奇跡のように思えます。
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