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【アメリカ独立リーグ挑戦記】エンパイアリーグトライアウト初日のメニュー・スケジュール・参加人数 アメリカ滞在4日目 Empire League Day4

前回に引き続き【米独立エンパイアリーグ挑戦記録】と題して、ぼくの参加した2018年のアメリカ独立リーグのトライアウトの様子を紹介していきます。

 

今回はついにトライアウトキャンプが開幕。トライアウト初日のメニューやスケジュール、参加人数などを詳細にお伝えします。

 

 

 

トライアウトメニュー0: 朝ごはん

 

キャンプ地での最初の朝、目覚めて真っ先にしなければならないのは朝ごはんの心配でした。キャンプ期間中の食事は支給されますが、まだスタートしていない今日の朝ごはんは各自調達しなければなりません。タイミングよく車を持っている選手が朝ごはんに出掛けるというので、昨日の夕食も逃していたぼくはこのチャンスを逃すまいと真っ先に手を挙げたのでした。

 

車へ向かうとすでにもう1人先客がいます。見覚えのある後ろ姿に、

 

“Hi, I’m T. You are Scott, right?”

 

と声を掛けてみるとビンゴ。ロン(ベルギーでのチームメイトのロン、ロナルド・スクルールがBCリーグの新潟アルビレックスと契約して日本でプレーします/Ronald Schreurs)がこのエンパイアリーグでプレーしたときのコーチ、スコットでした。

 

スコットと、アメリカの色々なリーグでいつもスコットのチームでプレーしているピッチャーのベニと、前回のブログで紹介した佐野川リョウ選手と4人での朝食。エンパイアリーグ時代やベルギーでのロンの話もたくさん出て、楽しいものになりました。初めて会ったひととお互い共通する友人の話をするというのはとても幸せな体験です。

 

 

朝食から帰ってくると、昨日とは比べ物にならない人数の選手たちがキャンプ場に溢れていました。その数はおよそ200人。今年は6チーム各20人のロースター枠を争うことになるので、合格枠は120人です。カリフォルニアウィンターリーグなどで契約を取れる人数が参加者の1/3程度であることを考えると、かなり良い確率だと言えるのではないでしょうか。

 

いったん部屋に戻って身支度を整えてから、各々ポジションごとにパビリオンと呼ばれる集合場所へ向かいました。いよいよトライアウトが開幕です。

 

まずはピッチャーオンリーの選手、ピッチャーとポジションプレイヤーの2WAY(二刀流)の選手、そしてポジションプレイヤーオンリーの選手の順にチェックインを済ませます。今日着いた選手たちはこのときに部屋割りも言い渡されたようでしたが、早めに着いたぼくたちはすでに仲の良い選手たちと居心地の良いベッドを確保していたので気持ちも楽でした。

 

 

 

トライアウトメニュー1: 60ヤード走

 

チェックインを済ませると、まずは野手が集められてトライアウトの第1種目、60ヤード走のタイムを測ります。去年はランダムな順番で走ったのでアンフェアだったと言っている選手もいましたが、今年はキャッチャーは一塁手と一緒に走るとのことで一同喜んでいました。大事なのはタイムですから、そんなことは全く関係ないと思いますが。

 

前日の大雨の影響を受けて、計測場所はグランドではなくコンクリートになりました。ランニングシューズで走る分には滑ることもないし、むしろグランドより良いコンディションだと思います。入念なウォーミングアップを終えて、タイム計測が開始。受験番号207番だったぼくは、キャッチャーのなかで7番目。すぐに順番がやってきました。

 

ちなみにこの受験番号は、それぞれ投手なら1、キャッチャーなら2などのポジションナンバーが1桁目に、あとの2桁が登録順になっていました。外野手は全員一括で、8がポジションナンバーとして1桁目に与えられます。

 

計測側の準備完了の合図の後、各自の動き出しでストップウォッチをスタートするのでフライングを気にする必要はありません。ぼくは盗塁の形ではなく正面を向いた構えを選択して、利き足の右足を蹴ってスタートしました。

 

タイムは教えてもらえませんでしたが、緊張からか力が入ってしまいベストの走りとは行きませんでした。計測でも自分の走りができるように次回までに改善したい点の1つですが、キャッチャーに関して言えば60ヤード走はそこまで大事な種目ではないと思います。

 

60ヤード走の計測は野手のみ。投手はこの間にキャッチボールを行なって、キャッチャーの計測が終わり次第、室内練習場でブルペン投球に入ります。

 

 

 

トライアウトメニュー2: ブルペン投球・捕球

 

室内練習場に移動すると、もうすでにキャッチボールが終わったピッチャーと60ヤード走が終わったキャッチャーで早速ブルペンが始まっていました。今回は雨の影響があったことと、3レーンで同時に進行したいという理由から室内でのブルペンになりました。

 

しかしこの室内ブルペンがとても捕りにくい。窓は全て締め切られて自然光が遮断されており、室内灯だけでは90mile(144km)を超えるファストボールを捕るには不十分です。さらに床はゴムのような弾む素材、滑りも悪くブロッキングもとてもし辛い環境でした。

 

しかし、この環境はぼくに大いに味方することになりました。他のすべてのキャッチャーが捕球に精一杯、抜けたボールやショートバウンドのブロッキング、ましてはフレーミングまではとてもできない状況のなか、捕球技術に自信のあるぼくはすべてのボールに神経を尖らせ、捕球技術をアピールすることに成功しました。あとで他の日本人選手からも、キャッチャーの中では抜群に動きが良かったと言ってもらえました。難しい環境は他の選手にとっても同様ですから、利用次第だということだと思います。

 

ピッチャーオンリーの受験人数は60人前後、2WAYを含めると70人を超える人数がブルペン投球を行います。それに対してキャッチャーの受験人数はたったの15人です。1キャッチャー平均5人近くのピッチャーを受けなければならないのは大変ですが、1チーム2人のキャッチャーが必要であることを考えればキャッチャーに関しては8割がトライアウトをパスできる計算になります。

 

以前ブログにも書いたことがありますが(ポジションはキャッチャーですと言って、そうだと思ったと言われる喜びについて/Happy to be Catcher)、キャッチャーというポジションは苦労も多い反面とても恵まれたポジションだと言うこともできます。

 

この日のブルペンは、基本的なメカニックが見られれば良いということでピッチャーは7〜8割での投球が指示されていましたが、それでもMAX 93mile(148.8km)を計測した投手がいました。だいたい各ピッチャー5球程度の立ち投げのあと15球程度のブルペンを投球。最初の5球はファストボールを、そのあとは変化球を投げて、最後は後ろでスピードガンを構えるコーチたちのリクエストによって見たいボールを投げ込みます。

 

90mileを超えるボールや素晴らしい投球をする投手のレーンには何人ものコーチが集まり、先発かリリーフか、1試合何球くらい投げられるのかなど様々な質問が飛びドラフトのチーム作りの参考にされますが、そうでない投手は静かに終わっていきます。8割投球とは言え、ピッチャーたちにとってはトライアウト序盤の山場だと言えるでしょう。

 

 

 

トライアウトメニュー3: ケージバッティング

 

キャッチャーたちは延々とブルペンを捕っていましたが、この間に内野手と外野手はケージでのバッティングを行なっていました。ぼくはブルペンの方に参加していたので詳しくはわかりませんが、おそらく各選手10球程度の持ち球を近い距離からゆっくり投げるバッティングピッチャーで打っていたようです。

 

リーグスタッフからは2球見ればバッティングが良いか悪いかはすぐにわかるという話を聞きましたが、このときチームの監督たちは全員ピッチャーのブルペンを見ていますから、このバッティングが野手のトライアウトにとってどの程度重要なものだったかはついぞわかりません。ちなみにキャッチャーに関して言えば、バッティング練習は1度も行わないままドラフトの日を迎えました。

 

 

 

トライアウトメニュー4: 外野手のバックサード、バックホーム送球

 

ようやく全投手のブルペンが終了して、さあバッティングだとケージへ向かうと、キャッチャーは外野手のバックサードとバックホームの送球を受けてくれるようにと支持されました。つくづく守備優先のポジションなんだなと実感させられます。

 

外野手は1人4球の持ち球で、全員ライトに入って2球をサードへ、2球をホームへ送球していました。前日の雨に濡れた滑りやすい芝生と、回を追うごとに汚れていくボールに苦労している様子でしたが、キャッチャーから見ていてもその中でも肩の良い選手と悪い選手の差は一目瞭然でした。

 

カットマンが捕れないような高いボールを投げている選手は、その高さでないとサードやホームまで届かないということなのでまず問題外。その中で、しっかりと大きなステップをとって良いので、力強いボールが投げられていた選手は目立っていましたし、コーチたちも積極的にメモを取っていました。

 

日本とは違う部分かも知れませんが、送球の正確性や捕ってからの素早さはこの時点ではほぼ考慮されていなかったように思いますので、これから海外でトライアウトを受験する予定のある選手には参考にして欲しい部分です。

 

 

ドラフト会議

 

ここまででキャンプ初日のトライアウトは終了。パビリオンに戻って食事となりました。食事が終わるとシャワーを浴びて部屋でリラックス。一緒に参加した日本人選手たちと今日のトライアウトを振り返っていると、ドラフト会議の時間がやってきました。

 

この時点ではすべての選手がいずれかのチームに指名されますが、その順位はすべて公開され、リーグウェブサイトからリアルタイムで確認することができます。これはつまり、現時点での自分の評価が明確になるというだけでなく、指名順位が低ければ低いほどキャンプ終了日にカットを言い渡される可能性が高いという訳です。

 

まずはピッチャードラフトから。ドラフト上位指名は昨年もプレーしてベストピッチャーを獲得したウェンデル・フローラヌス選手や、つい先程93mile(148.8km)のファストボールを投げ込んでいた選手などです。そうした中、井神力投手がニューヨーク・バックスからドラフト3位で、佐野川リョウ投手がプエルトリコ・アイランダースからドラフト4位で指名され所属チームが決定しました。

 

英語が喋れないので1人になったらどうしようと怯えていた菅原祥太外野手も佐野川投手と同じプエルトリコ・アイランダースに5位で、さらに一緒に参加した最後の日本人選手の土門新外野手も指名され、3人がチームメイトとなりました。

 

しかし、いつになってもぼくの名前は表示されません。不安な気持ちでドラフト指名リストを見返すと、他のキャッチャーも誰1人として指名されていないことに気が付きました。やはりポップタイム(セカンド送球)も測っていない状況でキャッチャーの指名を行うことはなく、明日に持ち越されるようでした。

 

所属チームが決まって、プエルトリコに行くことにワクワクしている選手や、モチベーションが上がって引き締まった表情をしている友人達を尻目に、ぼくだけがなんとなく中途半端な気持ちのまま初日を終えることになりました。しかしキャッチャーとして待ち時間もなく一日中気を張ってプレーし続けたため、ベッドに入ると急速に意識を失って行くのがわかりました。

 

ポップタイムを測ってドラフトに掛けられる明日は、キャッチャーにとって最も重要な日になるはずです。キャンプ初日の充実感と疲労と期待感と少しの不安と、様々な感情がないまぜになったままぼくの6月4日は終わったのでした。

 

 

 

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