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【アメリカ独立リーグ挑戦記】エンパイアリーグトライアウト4日目、合格と不合格の狭間で アメリカ滞在7日目 Empire League Day7

シリーズで書いてきました【米独立エンパイアリーグ挑戦記録】トライアウトキャンプ編も、残すところあと2回となりました。前回3日目の時点で、ぼくのトライアウトの合格はほぼ確定したとお伝えしました。

 

そこで、今回は別の選手にフォーカスを当てて、トライアウトの別の側面もお伝えできたらと思います。

 

 

 

朝。炭水化物モリモリの朝ごはんを食べ終わると、今日はいつもと少し動きが異なっていました。

 

今から受験番号と名前を呼ばれたものは6番のフィールドに集まるようにとアナウンスされたあと、次々と番号と名前が読み上げられます。みんながなんだろうとざわつく中、20人程の名前が読み上げられ、少し間をおいてさらに20人程が追加されました。

 

名前を呼ばれた選手は、キャンプ1日目と同様にコーチたちの前でフィールディングやバッティングを披露、コーチたちは欲しい選手がいればピックアップできるというシステムのようでした。つまり、開幕ロースターに残れるかどうかのボーダーライン上、もしくは現時点で残るのが難しい選手たちによる合同トライアウトです。

 

ぼくの名前は呼ばれませんでしたが、日本人選手のひとりの名前が呼ばれました。

 

 

今回2018年のエンパイアリーグトライアウトキャンプに参加している日本人選手は5人。4人は日本でのトライアウトをパスした選手で、もう1人は合格とはいかないまでも可能性のある選手だったため、アメリカでのトライアウト合格に賭けてここまでやって来ました。

 

その彼が合同トライアウトに参加するということは、合格が厳しい状況にあることを表していました。彼のポジションは外野手。ドラフト直後にチームに合流したときに書いたように、外野手は各チームで溢れており、合格は狭き門でした。

 

Good luckと言い合って自主練習のグランドへ向かいますが、ぼくも井神投手も彼のことが気になって仕方ありません。午前中の練習が終わってすぐに合同トライアウトが行われているフィールドへ向かい、外野手のバックサード、バックホーム送球を見学していましたが、Bucksの監督に早くパビリオンに戻って飯を食えと言われ退散となりました。チラリとだけ見ることのできた彼の送球は、初日よりもずっと良い送球でした。

 

 

 

 

午後はこれまでの2日間と同様、試合形式のトライアウトが行われました。ひとつだけ違った点は、明日のトライアウト最終日の前にピッチャーを疲れさせないため、各チームのコーチがバッティングピッチャーを務めて試合が行われたということでした。

 

ぼくらNew York Bucksの相手は、彼を含めた3人の日本人選手を抱えるPuerto Rico Islanders。果たして彼は、プエルトリコのチームの中にいました。別のチームからピックアップの声は掛からなかったようでした。

 

その彼の打席。キャッチャーはぼくでした。第1打席は倒れましたが、第2打席に入る前、同じプエルトリコでプレーする佐野川リョウ投手が、彼の肩を抱いて何か熱心に話しているのが見えました。後で聞いたところによると、メンタルコーチとして彼を強く励ましていたようでした。バックネット裏ではBucksの井神投手が、あとでチェックするためのビデオを撮るべくiPhoneを構えています。みんなが彼を応援していました。その3球目。インコースを思い切り振り抜いた打球はライトを遥かに超え、俊足を飛ばして一気にサードへ。スリーベースヒットとなりました。

 

調子を取り戻した彼は、その次の打席にはなんと柵越えの満塁ホームランまで放ち、プエルトリコのベンチは大盛り上がり。交代してベンチに下がっていたぼくや、カメラを構える井神選手も含めてこの試合全体で1番の盛り上がりとなりました。

 

 

 

それでも、彼がこのトライアウトに合格するのが難しいことはみんな感じ取っていました。外野手のあの人数を押し退けてロースター入りするのは至難の業。外野手としてスタメン、クリーンナップの3番を任されている菅原祥太選手はさすが元NPB選手というところを見せていました。

 

井神投手は、ホームランのビデオだけは彼に送ろうとしませんでした。これを送ったら、いい思い出として大切に仕舞って野球をやめてしまうと思ったから。でも彼はそれでも送って欲しいと言ってそれを受け取って、最終日、自分の名前のない開幕ロースターを確認して日本へと帰って行きました。

 

キャンプ地から空港へと彼を送る車には、大きな荷物を積むとあと1人しか乗ることができなくて、ぼくは井神投手に行って来いよと言って扉を閉めました。ふたりがその車の中で何を話したのか、それともあまり話さなかったのかぼくにはわかりません。

 

 

ぼくはすべての野球選手が1日でも長く野球を続けて欲しいとは思っていませんが、もし野球の好きな誰かがいたとして、その彼は野球がずっと続けられればいいのになと思います。

 

いや、ずっと続けていなくてもよくて、ぼくみたいにやめてもまたやりたくなったら帰って来てやればいいのにと思っています。

 

日本でも、アメリカでも、オーストラリアでも、たとえ南極でも、どこかのフィールドでその彼にまた会えればいいなと思います。いつでも、どこでも、ボールを持って相手がいれば、そこはもうベースボールフィールドだから。

 

 

 

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