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【アメリカ独立リーグ挑戦記】エンパイアリーグキャンプ2日目のドラフト、実戦トライアウト アメリカ滞在5日目 Empire League Day5

今回も引き続いて、ぼくが挑戦したアメリカ独立リーグのエンパイアリーグトライアウトキャンプの内容を紹介していきます。

 

2015年にスタートしたばかりのエンパイアリーグは、日本語での情報がまだまだ少ないのが現状です。またエンパイアリーグ以外のトライアウトも内容に共通する部分は多いと思いますので、海外、特にアメリカでプレーしたい若い選手にシリーズ通して参考にしていただければと思って書いています。

 

 

朝。今日からはご飯の心配もしなくていいと思うだけで少しだけ安心です。9:30からはパビリオンで毎朝ミーティングが始まるので、8:30くらいに行って朝ごはんを食べます。朝は炭水化物モリモリ。栄養バランスまで考えられているとは思えませんが量だけはあるので、足りないものは自分で補えば充分です。

 

ミーティングが始まると、さっそく衝撃の発表が。昨夜のドラフトから数時間、まだチーム練習も試合もミーティングさえも1度もしていない中、すでに何人かの選手のトレードが行われていました。監督によっては信頼して毎年獲得している選手やどうしても欲しい選手がいるらしく、ドラフト直後のトレードも珍しいことではないようです。江川卓選手の事件のことを一瞬思い出したりもしましたが、ここ独立リーグではなんでもありのようでした。

 

 

 

ミーティングが終わると、キャッチャーは1つのグランドに集まってポップタイムの計測とドラフト指名。その他の、チームが決まっている選手たちはチーム毎に集まってキャッチャードラフトが終わるまで自主練習となりました。ここSports at the Beachには両翼300フィートの少し小さめのフィールドも含めれば、6面のグランドがそれぞれ独立して集まっています。日本やましてやヨーロッパでは絶対に見られない野球大国の風景に圧倒されます。

 

ポップタイムの計測も、受験番号順に行われました。1人2球の練習と4~5球の本番送球が行われ、すべてのタイムが計測され記録されます。

 

はじめの印象ではみんなそれほど早くはないな、ここで一番早い送球を見せてやろう。と思いましたが、自分の番が来るとなかなか上手くいきません。緊張からか球がバラついてしまい、ワンバウンドや横に逸れたボールが行ってしまいました。やっと1球セカンドの選手の胸に投げられたところで、持ち球終了。もう1球投げさせてくれないか?と頼みましたが、監督の1人から今の送球は良かったから大丈夫だ、Trust me言われ終了となりました。

 

自分が上手くいかなかったあとのプレーはみんな上手に見えるものです。しかし気持ちを切り替えて、内野手用のグローブを持ってセカンドベースでの捕球に向かいました。キャッチャーの他に内野のどこでも守れるというのは自分の長所でもあるので、積極的にアピールしない手はないと思ったのでした。

 

 

 

全員の計測が終わると、すぐにその場でドラフトとなりました。1巡目は、キャッチャードラフトの指名権獲得ために野手ドラフトの1位指名を辞退したオールド・オーチャード・ビーチ・サージから。ぼくの名前は呼ばれませんでした。次は日本から一緒に参加している井神選手を指名したニューヨーク・バックス、ここでも呼ばれません。プエルトリコ・アイランダース、ニューハンプシャー・ワイルドと進みますが、1巡目でぼくの名前は呼ばれませんでした。

 

2巡目は1巡目と反対の順番で指名が進みます。ぼくは、プエルトリコに対する興味からプエルトリコ・アイランダースか、監督のスコットとプレーしてみたいという気持ちからニューハンプシャー・ワイルドだったらいいなと薄っすらと考えていました。反対に、オールド・オーチャード・ビーチ・サージとプラッツバーグ・レッドバーズ、アグアダ・エクスプローアーズの監督とは1日目のトライアウトで一言も話す機会がなかったので、ぼくに興味を持ってはいないのではないかと予想していました。

 

そんなことを考えていたまさにその時、ドラフト2巡目の終わり間近でニューヨーク・バックスから指名を受けました。井神力投手とチームメイトです。緑のキャンプTシャツをもらって、チームメイトたちの待つグランドへ向かいます。井神選手からは、オーストラリアで電話をかけたときからなんだかバッテリーを組むようになる気がしたと言われました。まったく困った縁です。

 

ドラフトを受けてからグランドへは、一緒に指名されたキャッチャーのドルトと向かいました。彼は大学を卒業後いったん就職したが、自分の仕事が好きになれず自分がしたいのは野球なんだと気づき復帰したと教えてくれました。ウィンターリーグからフロンティアリーグの契約を掴んだが、つい2週間前にリリースされて家に帰ったところ、お母さんがエンパイアリーグのトライアウトの情報を見つけてくれて、行っておいでと後押ししてくれたと教えてくれました。ぼくもドルトに自分の話(大学院卒ブランク5年でプロ野球選手として海外でプレーするようになった訳)をしました。独立リーグまで来るような選手は、皆それぞれに物語を持っているものです。

 

 

 

グランドに着くと、早速シートノックが始まりました。上手い選手もあまり上手くない選手もいますが、全部で30人を超える選手がチームに割り振られています。またサードやファーストには4,5人ずつの選手が、外野には合計10人近い選手がいます。この中で10人を超える選手が最終日にはリリースを言い渡されること、コーナーインフィールドや外野手の選手は特に競争が激しいことは容易に見て取れました。

 

ぼくもひとの心配をしている暇はありません。指名順位を見れば明白ですが、ドルトとぼくではぼくがカットされる可能性の方が常に高いのです。実は昨年ベルギーでのシーズン中に痛めた肘はまだ完治していませんでしたが、ここで投げなくて投げるときはありません。ボール回しも、バント処理のファースト送球も、セカンドも、サードもすべての1球に力を込めて全力で投げました。ドルトにも全然負けていないところを見せられたと思います。

 

 

 

その甲斐あってか、スタッフとして監督たちとコミュニケーションを取っている松坂チェアマンアシスタントが昼食時にぼくのところに話をしに来てくれました。曰く、サードにあまりいい選手がいないから、キャッチャーとサードの2WAYとしてプレーしてくれればロースターに残れる可能性が高いとのことでした。ポップタイムのときの内野手でのアピールに効果があったのかはわかりませんが、ドラフト以来初めてのポジティブな言葉に一層モチベーションが高まりました。それと同時に、サードに余るほどの選手がいながらそれでもいい選手がいないと言い切る監督の言葉に、このリーグで勝ち残ることの厳しさも感じました。

 

 

午後からは、5イニングのショートゲームが2試合組まれていました。1試合目はプエルトリコ・アイランダースと、2試合目はニューハンプシャー・ワイルドとの試合です。奇しくも、どちらもぼくが興味のあったチーム。自チームの監督にいいプレーを見せるのはもちろんのこと、他チームの監督にぼくを指名しなくて失敗したと思わせたい気持ちもあります。さらに、こういったところでアピールしておくことは、もしリリースされたときに他チームに拾ってもらえる可能性を高める意味でとても重要です。

 

プエルトリコとの1試合目、先発したドルトに替わって、3回から井神投手とのバッテリーで試合に入りました。想像した以上にファストボールが威力を発揮しグイグイと押すことができましたが、高く打ち上げられたフライがグングン伸び、1本のホームランを献上してしまいました。監督からは狭い球場でなかったら外野フライだから気にしなくていい、いいピッチングだったと言ってもらえましたが、キャッチャーとしては後味の悪さを残す結果となってしまいました。

 

しかし最終回、ぼくに回って来た1打席に集中することは忘れませんでした。初球のファストボールをフルスイングしてファール、2球目はチェンジアップ系を待ってドンピシャでスイングしましたがわずかに早くファースト側にファール。3球目は2ストライクアプローチとしてステップとスイングを小さくして待ったところにファストボールが来て、コンタクト。左中間に低いライナーが飛んで行きましたが、わずかに力が足りずセンターライナーとなってしまいました。打ち取られはしましたが内容のあるアプローチのできた打席だったので、これを続けようと前向きに考えることができました。

 

 

 

2試合目はスコットの率いるニューハンプシャー・ワイルドが相手でした。この試合もドルトが先発し、4回からの2イニングをぼくが守ることになりました。全員が初めてリードするピッチャーで、しかも毎イニング新しいピッチャーが登板するので毎回投球練習後にマウンドまでサインの確認に行かなければならないという初めての経験でした。その替わった4回。盗塁を試みたランナーを完璧なタイミングで刺しました。これが投げられるんだったら、トライアウトのポップタイム計測のときに投げろよと自分で自分に突っ込むほどの完璧なボールでした。

 

これには、おそらく下位指名だったのでそれほど期待していなかった監督やチームメイト、さらには相手チームのスコットからも拍手とともにナイスプレーだったと声を掛けてもらえました。最終回にも、2ストライクからアウトコース低目を完璧なフレーミングでストライクコールさせて試合終了。1日通して自分のプレーが発揮できた1日となりました。

 

 

 

試合が終わると楽しみな食事。さすがメジャーリーグがステーキリーグと呼ばれるのに対してハンバーガーリーグと呼ばれる独立リーグ、夕食にはハンバーガーが出されました。ハンバーガーしか食べるお金がないことからついたこの別名ですが、海外のハンバーガーは大きくて豪華なのでそれほど悪くないとも思ってしまいます。もちろんステーキが食べられるリーグに早く行きたいという気持ちはいつも持ち続けています。

 

 

次回はエンパイアリーグトライアウトキャンプの3日目と4日目の様子を合わせて紹介する予定です。実戦形式のトライアウトが次々と進み、チームメイトの中でも起用法からロースターに残れそうな選手と残ることが難しい選手の差が生まれてきます。

 

そうした中でどんどん行われるチーム間での選手のトレードや、ロースター候補外選手で行われた合同トライアウトの様子などを伝えて行きます。

 

 

 

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